プリンスのキャリア初となるオール・インストゥルメンタル・アルバム。地球をモチーフにした特殊折りたたみパッケージ仕様。

amazon : N・E・W・S

ペイズリー・パーク・スタジオで1日で録音された本作で、プリンスはまたしてもオーディエンスを困惑させる。彼が今回録音したのは、4曲しか収録されていないプログレッシヴ・ジャズ・アルバムなのだ。各チューンはコンパス上の方位から取った名前をもち、演奏時間は14分間で統一されている。その上、総タイムがほぼ1時間に達していながら、歌詞はまったく付けられていない。大勢の先人たちと同様、見識豊かな彼も、音楽そのものに語らせることを選んだわけである。ただしプリンスの場合、音楽の雄弁さが群を抜いている。彼は音楽を魅力的な会話のように仕立て上げた。その語り口は感動的でありながらエキセントリックであり――不安で恐ろしげな雰囲気から静かでディープなリズムをもった曲調へと急展開する――時おりサン・ラーや、奇妙なことにメタリカを思わせる部分が出てくる。

当初はザ・ニュー・パワー・ジェネレーションのもっとも新しいメンバーたちの単なるジャム・セッションとして出発しただけあって、本作はプリンスとしてはかつてないほどコラボレーション色の強いアルバムとなった。プリンスはギターを演奏しつつ、『One Nite Alone Live』のツアーをともにした優秀なバンドを未知の領域へと導く。彼らは、アンビエントな雰囲気ただよう「North」では絶え間のない揺らぎをつくり出し(ロンダ・スミスの流ちょうなベースが大きく貢献している)、「East」では思わずヘッド・バンギングしたくなるような激しさを見せ、耳当たりのよいエレガントなジャズ・チューン「West」ではしなやかでリズミックなR&Bグルーヴを沈痛といっていいほど荘重な知性派ポンプ・ロックへと急変させ、「South」ではつかみどころのないスペース・ロックを極めて見せる。

最近亡くなったプリンスの両親が「プリンス・ロジャース・トリオ」で演奏していた音楽に対するオマージュではないかと言いたくなってしまうが、単なるトリビュートにしてはあまりにも前向きなサウンドなのだ。これは勇敢な1歩であり、際立って未来の音がするアルバムである。(Jaan Uhelszki, Amazon.com)

1. North
2. East
3. West
4. South